彼と私のお伽噺

「そういや、戸崎って去年から総務部長だったな」

「昴生さん、戸崎部長と親しいんですか?」

「別に親しくはない。戸崎は優生(ゆうせい)の同期で、高校のときからの友達なんだよ。だから、昔はよくうちにも来てた」

「そうなんですね」

 優生と言うのは、昴生さんのお兄さんだ。昴生さんにはお兄さんがふたりいる。

 鷹見家の長男で、TKMグループの跡継ぎでもある優生さんは、この春に専務に就任したところだ。

 優生さんは昴生さまより七歳年上で、私とは十以上も歳が離れているから、私は優生さんとはほとんど交流がない。

 私が小学生のときに、優生さんは既に大学生だったし。通りすがりに声をかけられた記憶が朧げにある程度で、向こうも家政婦の孫だった私の顔や名前なんて、ろくに認識していないだろう。


「戸崎部長、良い方ですよね。総務部でも評判がいいみたいです」

 優生さんのお友達なら……と思って、好意的なコメントをしたら、昴生さんが顔を顰めた。


「だろうな。戸崎は昔っから、外面がいい。仕事もできるし、ほっといても女が寄ってくる」

 腕組をして年上の戸崎部長のことを呼び捨てる昴生さんは、彼のことを褒めているのか貶しているのかよくわからない。

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