彼と私のお伽噺
「上司なんて、怖がられてるくらいでいいんだよ。別に俺は、職場でモテたいわけじゃない」
昴生さんはそう言うけど、私にはただ虚勢を張っているようにしか見えない。
昔のことはよくわからないけれど、私と暮らしていた五年間、昴生さんに恋人らしき人はいなかったと思う。
どんなに仕事が忙しくても深夜までには必ず家に帰ってくるし、無断外泊だってしたことがない。
たまに仕事絡みの出張で外泊することはあったけど、たいした用事がなくても私にマメに連絡を入れてくる。
そんな昴生さんから、女性の影を感じたことは一度もない。
見た目や肩書き的にはモテそうなのに女の人が寄ってこないのは、俺様な性格に難があるからだと思ってたけど。
もしかして、昴生さんに女性の影が無かったのは、私がいたから────?
我の強そうな綺麗な顔をマジマジと見つめていると、昴生さんが怪訝に眉を寄せた。
「なんだ?」
「いえ、なんでもないです」
今まで気付かなかったけれど、私はこの五年間、思っていた以上に昴生さんに大事にしてもらっていたのかもしれない。
そう思ったら、妙に胸が騒いだ。