魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
「なんだ、可愛い顔してんじゃねーか。初めからその顔見せてれば……そうだな、脱げよ。脱いで買ってくださいってお願いすれば、何か恵んでやるよ」
 スパンと、ディラが飛び出し、華麗におっさんの頭に回し蹴りをかました。
 剣から3mも離れていたのに。すごい勢いで飛び出したからなのか。蹴りは、見事におっさんの頭を空振りした。
『くそうっ、許さない、許さないっ』
 ディラが怒りに我を忘れている。
 ……ふふ。ありがとう。幽霊になってまで、人ために本気で怒ってくれるなんて。ディラはいい人……いや、幽霊だね。
 ネウス君も、すぐに飛び出していきそうな表情をしているので、右手で制する。
「早く、飲んで本物だと確認して。本物の魔力回復薬なら買ってくれるんじゃないの?それとも、あなたはビビりなの?毒だったらどうしようと怖くて飲めないの?」
 煽るような言葉を口にする。だって、このままじゃいつまでもおっさんは飲まないような気がしたから。
「はっ、誰が怖いものか!」
 瓶のふたを開け、一口ごくりと魔力回復薬を飲んだとたんに、おっさんが目を見開く。
「ほ、ほ、ほ、本物の魔力回復薬っ!」
 慌てて、ふたをもとに戻す。
「本物だと分かってら、買ってください。それなりに価値があるんでしょう?」
 ふっとおっさんがにやりと笑った。
「それなりに価値が……か。何も知らない愚かな外民がっ!その辺で見つけたんだろう?運がよかったな。これ一つあれば、一生遊んで暮らせる価値がある」
 え?
 1本で一生遊んで暮らせる?
 えーっと、大量にあるんだけど……。なんでそこまでの価値が?
「いいや、運がいいのは、俺か。これは、俺がもらってやる。消え失せろ外民」
 え?
「ちょっと、買ってくれるんじゃないなら、返してください!別に一生遊んで暮らせるお金なんていらないけれど、取り上げられるのは」
「うるせー、さっさと立ち去れ!立ち去らないならどうなっても知らねーぞ【風の槍】」
 また、呪文だ。

 ひゅんっと風を切るような音。
 目の前に、私をかばうように両腕を広げて立つディラの姿が見える。
 そうして……。さらに、その前に立つネウス君。
「ぐぅっ」
 小さな唸り声をあげて、ネウス君が後ろに倒れてきた……私の手の中に。
「ネウス君っ」
 口から一筋の血が流れ落ちる。
「ユキ、逃げて……」
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