魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 私の眼鏡を飛ばしてほほを傷つけたのは「風の針」だと言っていた。今度は「風の槍」。魔法の風の槍でネウス君は……。
 顔を近づける。大丈夫だ、息はしてる。
「エリクサー」
 収納鞄から取り出し、指にエリクサーを垂らしてネウス君の口に触れるのと、ネウス君の舌が私の指をなめるのとはほぼ同時だった。
 意識を失っていたと思ったけれど、意識があった?
「許さない」
 ネウス君はすぐに立ち上がると、ディラの剣を鞘から抜き取り、地面を蹴った。
「僕のユキを傷つけた、再び傷つけようとしたお前は、絶対に許さないっ!」
 え?ネウス君が自分のことを僕って言った?今の言葉はまるでディラみたいだよ?
 ネウス君が剣を振り上げて振り下ろす。
「馬鹿が、剣など届くかよっ」
 おっさんが、2mほど後退する。剣が届かない位置。そうだ。外から入れない限り、剣が届かない位置の人間に攻撃を加えることはできない。
 魔法が使えない私やネウス君は手も足も出ない。
「馬鹿はそっちだ!僕を誰だと思っている!」
 え?
 今の言葉、誰?ネウス君だよね?ディラじゃないよね?誰?
 振り下ろした剣の軌道に沿って、壁が崩れ落ちた。おっさんの服もスパンと切れている。薄くなりかけていた髪の毛が飛び散り、体だけは何らかのガードをしたのか切れてはいない。が、後ろに吹き飛んでみっともなくしりもちをついた。
「もう一発行くぞ!はぁーーーっ」
 ネウス君が剣を構えて壁に向かって振り上げた。
「今のは何の音だ?」
「これはどうしたことだ」
「敵襲か?外民が攻めてきたのか?」
 壁の向こうに騒ぎを聞きつけて兵たちがやってきた。
「そ、そうだ、あいつらが突然襲ってきた」
 おっさんがしりもちをついたままこちらを指さした。
「違うわ!私が売りに来た魔力回復薬を、取り上げて、私たちを追い払おうとしたのよっ!」
「何だって?魔力回復薬?」
 兵の一人が、しりもちをついたおっさんが手に持っていた小瓶に気が付いた。
「それは……本物なのか?」
「まさか……」
 袋から魔力回復薬をもう一本取り出して、壁の中に投げ入れる。
「本物よっ!そいつが飲んで確かめたんだもの。本物だと知ったとたんに、私たちを攻撃し始めた。嘘だと思うなら、今入れたものを試してみればいいわ!」
 兵の一人が瓶を拾い上げてほんの1滴手に垂らしてなめた。
「ほ……」
「どうした?」
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