魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 まぁ、あんな人を魔力で差別するような人間ばかりの街にいるより、ある意味心優しい人たちに囲まれ他方が幸せといえば幸せだけれど。
「えーっと、確かに運がよかったです」
 荒野に捨てられて死にそうになった時にはどうなるかと思ったけれど。霊感がまさかの大活躍。
 ちらりとネウス君が持っている剣から出ているディラの姿を見る。幽霊に助けられる日が来るなんて……ねぇ。
「本当にのぉ……。私ら魔力なしを追い出すだけじゃなく、罪もない者たちを犠牲にするようなことを……」
 おばばさんがもごもごと何かをつぶやいた。

 聞き返そうとする言葉は、突然の鳴き声で阻まれる。
「あああーーーん、ああーん」
 大きな泣き声が聞こえて、おばばと私の会話は中断した。
「なんじゃ、どうしたんじゃ」
 泣きじゃくる5歳前後の男の子ドンタ君。何があったのだろう。隣には困った顔をしたミーニャちゃんがいる。
「火が……消えた……」
 泣きながらドンタ君がうつむき加減に口を開く。
「なんじゃとドンタ、火が消えたというのか?」
 おばばが驚愕する。
「ドンタが鍋をひっくり返して……」
 ミーニャちゃんが泣いているドンタ君をちらりと見て、小さな声で説明を加える。
「調理用の火と、火種は分けたあるじゃろ?どうしてそんなことに」
「ドンタが鍋を運んでいる間に、私が薪を並べていて火種から火を移そうとしていて……そこにモモが走ってきて……」
 モモというのは、ちょっと離れたところに見える2歳くらいの子のことだろうか。
「困ったのぉ……街へ行って火種をもらおうにも……もうお金もない……どうしたものか……」
 おばばが小さくため息をつく。
 火が消えたことが、それほど大変なこと?
 確かに、火を起こすのは慣れていないとちょっと時間がかかるけれど。
「魔力がないわしらじゃ……火種がなければ火は使えないというのに……。どうするかのぉ……」
 おばばが沈痛な表情を浮かべる。
 泣いているドンタ君を慰める言葉をかけることもない。そこに気が回らないほど、本当に困っているといった様子だ。
『ユキ、火の魔石があるよ、火の魔石!』
 火の魔法に、火の魔石……。
 魔力がないから何もできないという言葉がよみがえる。
「ディラ、木の棒や木の板、それに綿ぼこりと紐、入ってる?」
 おばばたちから少し距離を取ってディラに話しかける。
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