魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 ぽわりと、赤い火が見える。もう少しだ!シュロの皮を継ぎ足して息を再び吹きかける。
「よし、火だ!」
 残りのシュロの皮の上に置いて風を送る。無事に火が付いた。
「火……だ」
 立ち尽くしたままネウス君が火を見つめてる。
「消えないうちに、薪を」
「あ、うん、持ってくる」
 子供たちが慌てて動き出した。
「一体、何が起こったんじゃ?魔法の一種か?」
 おばばが座り込んで今起こしたばかりの火を見る。
「私の生きてきた世界……国には、魔法が使える人は一人もいませんでした。だけれど、火は使えます」
 もしかして、この世界は魔法を使えば簡単に火が付けられるから、火を起こす方法が発見されないままだったのかもしれない。
 地球じゃ、石器時代からすでに人類は火を起こしていたのに。発明はまず不便を見つけるところからっていうし?
「魔法も、魔石も、火を作るのには必要ないんです」
 ネウス君が弓切り式火おこしの道具に手を伸ばした。
「私がしたようにやってみて。しっかりと乾燥した木を使うのと、あとは煙が出たからと言ってすぐにやめないようにすること。それから」
 一通りポイントを説明する。後は練習あるのみだよね。
「私もやりたい!」
 ミーニャちゃんが手をあげる。子供には難しいかな?いや、小学校の授業でやるところもあるんだよね。
 だけれど、皆ガリガリで体力も力もなさそうだ。

「1人が上からしっかり押さえて、もう一人は、下の木を押さえて。それかもう一人が弓を前後に動かしてみて」
 分業させることにした。ネウス君が煙が上がるところまで作業してバトンタッチ。
『ユキ……魔法じゃないのに、魔石も使わないのに、火を出した……ユキはまるで神様のようだ……』
 か、神様って……。この世界の神様はいったいどういう存在なんだろう。奇跡みたいなことは神様じゃなくて魔法やポーションで起きるわけだけど。
 すごいのは日本の教育じゃないかな。
 日常生活では、火はマッチでもライターでもガスコンロでも、すぐにつけることができる。だから、火のおこし方なんて知らなくたって何も困らない。それなのに、知識として学習するんだから。おかげで、役に立ちました。
『ユキ、かわいい上にすごいユキ。僕はすごい人間だとちょっと思っていたこともあったけど、ユキのがすごい!魔力0なのに、火を出せるユキはすごい!すごくてかわいい!』
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