魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
「あの、それもアーティファクトですか?」
 ミーニャちゃんが、水の魔石と火の魔石を不思議そうに見た。
 うーんと、ネウス君も魔石のことは知らなかった。ミーニャちゃんも知らないんだ。おばばさんは知ってるのかな?
「なぁ、何してるんだ?見せてくれ」
 酒樽の高さは私の胸元くらいまである。ミーニャちゃんは中を見ることはできるが、ドンタ君は中が見えない。
 酒樽の縁に手をかけてよじ登ろうとし始めた。
「危ないっ!」
 慌ててドンタ君を止める。まだお湯がたまりきっていない酒樽は軽く、ドンタ君がぶら下がったことで倒れそうになる。
「ユキっ!」
 ドンタ君を抱えたまではよかったけれど、そのままバランスを崩した酒樽が倒れてきそうになった。
 トンッと、私の背中が何かに当たる。
 二本の腕が伸びて、倒れそうになった樽を支えた。
「大丈夫か、ユキ」
 耳元でネウス君の声が聞こえる。
「ああ、ネウス君……ありがとう」
「ユキが無事でよかった……」
 ネウス君がそのまま樽を押してもとに戻す。
 樽、ドンタ君、私、ネウス君という配置。背中にネウス君がぴったりとくっついている。
『ああー、ネウス、ユキに変なことするな、ユキを助けてくれたことには礼を言うけど、僕のユキにいつまでも引っ付いてるんじゃないっ。かわいいユキの近くに行きたいのは分かるけど、かわいすぎて思わずぎゅってしたくなるのも分かるけど、僕の許可なくユキをぎゅっとするのは僕の目が黒いうちは許さないぞっ』
 ディラが何かおかしなことをわめいている。
 ……いや、突っ込みどころが満載過ぎて、どこから突っ込んでいいのか。かわいくないし、ディラのでもないし、ぎゅっともされてないし……。
 そもそも、目は黒くないよね。死んだからとかでなくて、そもそも、黒目じゃないよね……。
 ネウス君が樽を起こして離れると、ディラはぐっとこぶしを握り締めた。
『どうして、僕は僕の手でユキを助けられないんだろう……』
 いやぁ、幽霊ですからね?……ずいぶん落ち込んだ表情をしている。

『どうして、僕には体がないんだ……』
 体?剣が落ちてたあの周辺で300年の間に朽ちたんじゃないだろうか。ああでも、骨は残っていたかも。
 遺骨……探してあげればよかったかな。もう、今更だよね。荒野のどこにあるのかなんてさっぱり分からないよ。ごめん。
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