魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 恩をちゃんと返さなくちゃ。……ディラがいなかったら、死んでたよね。今頃私も幽霊だよ。いや、成仏したかな?どうだろう。
 仕方がない。ちょっとばかし、頑張るか。
 目をつぶる。精神を集中させる。お腹から全身に霊気を行き渡らせるように。
 そうして、それを体から徐々に放出する感じをイメージ。……ああ、力の弱い目には見えない霊のたくさんの声が聞こえる。
 子供たちの泣き声。
 ここで亡くなった子供たちだろうか。
 おなかが空いたと泣いている子。
 誰かを探す声に……。ああ、そう。まだみんなと遊んでいたいの。おばばと離れたくないの。
 駄目だよ。ここにいるより、お空に昇って行った方が幸せになれるからね。お空に昇っていっても、おばばやみんなと一緒だからね。
 温かくて気持ちよくて、それからね、新しいぴかぴかに出会えるから。幸せになるために、進むんだよ。大丈夫。大丈夫。おばばは忘れたりしないよ。一度お空に昇って、お願いして守護霊として戻ってくることもできるからね。
 と、声をかけてから除霊。姿も見えない弱い霊を除霊するくらいならできるんですよ……。
 さて、ディラは……?
 うえーん、うえーん。
 ……はい。子供たちの泣き声が聞こえなくなった途端に、大きな泣き声が一つきこえてきました。
 霊気を収めて、声のしたほうに目を向ける。
 荒野が広がる。幸い視界を遮るものがないので、遠くにあるものまで見える……。
「なんで、あんな遠くに?」
 小さくため息をついて、2~300mは離れた場所まで剣を取りに向かう。
『ああ、ユキだ!ユキぃー!』
 剣に向かって歩き出すと、はるか向こうのディラがぶんぶんと手を振っている。
 これ、もしディラが自由に動き回ることができたら、間違いなく全速力で走ってきて飛びついてくるやつだよね。
 なんか、四本足で、しっぽぶんぶん振って走ってくる大型犬を想像する。キラキラと日の光を受けて輝く美しい毛並みの……犬。
 だって、大人が、あんなに嬉しさの感情表現を全身で表すかな?しかも、私みたいな喪女に対して……。
 私が来たことを、満面の笑みで、今にも飛びつきそうな顔して迎えるかな?
『よかった~ユキ~。嬉しい!嬉しい!嬉しくて昇天しそう!』
 してないけどね、昇天。
 嬉しそうな顔を見ていると、私の心も緩くなりそうだけれど、駄目。
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