魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 イケメンずるいな。微笑みかけるだけで気を緩ませようとは。だけど、駄目ですからね!しつけ……じゃない、犬じゃないな、ディラは。
「ディラ、夜、寝てる間にネウスに何かしなかった?」
 いつも早起きだというネウスがなかなか起きてこないことを思い出す。
 睨み付けるように尋ねると、ディラが視線を泳がせた。

『な、なにも、ほ、ほら、僕、触ることもできない体……だし』
 ……。やったな。
 何かしたな。
 金縛りに合わせたか、それともラップ音でも鳴らして睡眠を邪魔したか……。
「じゃ、ディラ元気で」
 くるりとディラに背を向けて、歩き出す。
『うわーん、ごめんなさぁい、ユキ、ちょっとだけ、ちょっとだけ、あの、ポーションを使って……』
 ん?
 ポーションを使った?
 立ち止まってディラを振り返る。
 そういえば、ネウス君は一晩でありえないくらいつやつやになっていた。風呂に入っただけにしては、つやつや過ぎる感じはしたけれど。
 何にしろ……ディラが悪気があって悪さをしたわけではなさそうだと言うことだけは分かった。
「ディラ、今日も頑張って飲んでね」
 小さくため息を吐き出し、剣に手を伸ばす。
『ユキ、ありがとう、ありがとう』
 大型犬よろしく手が届く距離になったら、ディラが私に飛びついてきた。両手を広げて。
 私の体をびょーんとすり抜けてあっちへ飛んでった。足元とつながっている先だけ伸びて2mくらい。
『うわぁ、うわぁ、ユキがいない、ユキが!』
 ディラが私の後ろで叫んでる。
 いや、あんたね。私の向こう側に行っちゃったんだから、目の前から消えるに決まってるでしょ。後ろ、後ろ、後ろだよ!
「皆に、朝と晩、お供えさせる?」
『え?』
 ディラが振り返る。
『あ、がんばって飲んでねって、お供え……ローポーション……』
 ディラが青ざめた。
 うん。昨日もまずいまずいとお腹パンパンにして頑張って飲んでたもんね。
 剣を持って歩き出す。
 ディラはとぼとぼと私の横を歩いている。
 ……剣にひっついてるんだから、足を動かさなくても移動できるんだけれど、歩く動作をしている。器用に、私の歩幅に合わせてゆっくりと。
 ディラが普通に歩いたら、背が高くて足も長いから、きっと私が速足で歩くくらいのスピードになるだろうに。
「ディラは、モテたでしょ……」
< 60 / 132 >

この作品をシェア

pagetop