魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 そうか。初めて見たのか。じゃぁ、食べられるかどうか分からないね。あとでディラに尋ねるか、調べるか……。
「少し取って持って帰ろうか」
 と提案すると、ネウス君がするすると木に登り始めた。
 すごい。だって、手がやっと届くような枝につかまって体を持ち上げて登っていくんだよ。がりがりでも力はあるんだ。
「落としても大丈夫?」
「うん」
 両手を開いて落ちてくる身を待ち構える。
 コツン。
「痛っ」
 ふっ。キャッチ難しいね。頭の上に落ちてきて、思わず両手で頭を押さえる。
「ごめん、ユキ!大丈夫か?」
 ざっと音をたてて、ネウス君が私の目の前に下りてきた。
 飛び降りた?
 ネウス君が私の両頬をつかんで、脳天を自分に向け、顔を寄せてくる。
「ああ、血は出てないな、よかった」
「ちょっとネウス君心配しすぎだよ」
 ネウス君の手が離れると、地面に落ちた赤い実を拾う。

「こんな小さな実がちょっと頭に当たっただけだよ大丈夫」
「あ、ああ、そうだな……でも、ちょっとでも怪我すればすぐに……」
 ネウス君の顔がゆがむ。
 ハッと胸が締め付けられた。そうか。ここの子供たちはちょっとした怪我がもとで命を失う子もいるんだ。……それは、きっと。
「魔法が使えなくても、怪我も病気も治るよ」
 治らないものは治らないけれど、治るものは魔法がなくても治る。
「ちょっとした怪我なら唾をつけておけば治ると、言いたいけれど、ばい菌が入らないようにきれいに洗えば……」
 いや、そのきれいに洗うというのがハードルが高いのか。はやり、水はほしい。
 予防接種がないころは破傷風で多くの人がなくなっていたんだ。破傷風菌は土の中にいる。怪我をしたからと田畑の仕事を休むわけにはいかないという時代の人たちは……。
「それから、しっかり食べて栄養をとって体力を、病気を跳ね返せる体力をつける」
 これもハードルが高い話かもしれない。だけれど、魔法がすべてじゃないのは事実なんだ。
「ユキが言うなら、信じる」
 にこっとネウス君が笑った。
「これも、治るよな……」
 ネウス君がちょっと顔をしかめて足を持ち上げた。
「ちょ、何、これっ!まさか、今っ!馬鹿、何てことするのっ!」
 木から飛び降りた時に突き出ていた何かで足の裏を傷つけたようだ。血が流れている。
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