魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 モンスターがいると知っていれば「モンスター」が出るから危険だと言わないだろうか?

 ……王都の人間は知ってる。きっと。もう、防御壁の外にモンスターはいないと。街を襲う驚異は去ったのだと。それなのに、防御壁を解除せずに街を覆い続けるのはなぜ?
 魔力ゼロを追い出すため……。
 な、わけないか。人数とか考えると、そんな数名のためにすべての人の外への出入りを制限する理由はない。
 300年もたっちゃったし、単に一般の人は生まれてからずっとどころか、両親も祖父母もそのご先祖様もモンスターなんて見たことのない塀の中で生活してるんだし、モンスターの存在自体忘れちゃっているのかもしれない。……おっと、なんだっけ、防御壁ね。塀の中っていうと、牢屋みたいね。
『教えてあげた方がいいのかな?いや、でも中に入れないから教えられないのか?人は行き来できないけれど、物のやり取りはできたはず。物資の補給やら手紙やら……』
 へぇ。物は出入り自由なんだ。じゃぁ、ディラは中に行けるね。剣だし。ああ、でもディラが見える人がいなきゃ意味ないのか。手紙で教える?
 ……いや、なんで私がそんな親切をしなくちゃいけないの。別に中の人たち、困ってそうじゃなかったから必要ないよね。うん。今のままで幸せそうだし。
 どうせ、外から中に入れるようになっても、外の人たちは中に入れてくれないんだろうし。
 むしろ、中の人がわざわざ魔力ゼロを笑いに来そうで、いっそずっとこのままの方が……と。
 なんだかちょっとマイナス思考だよね、私。……もうちょっと落ち着いてから考えよう。子供たちの生活が安定してから。決して中の人たちに馬鹿にされない状態になったら。中の人たちをうらやましいなんて思わないようになってから。うん、それがいい。無駄に嫌な思いをさせたくはない。
「ほんの数分しか中の様子は見れなかったけれど、立派な建物が建っていて、綺麗な服を着て、豊かに農作物が実って、幸せそうだったし……外に出る必要もないのかも」
 と、口にしてから、そうかもと自分も納得した。
 わざわざあんな荒野を2日も歩く意味はないよね。森で木の汁すすって蟻を食べる意味もないよね……。
『ああそうか。幸せに暮らしてるんだ。僕たちが救った世界で……よかった』
 ディラがふっとほほ笑む。
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