契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 二人の想いがあって結婚を決めて、その中の一部としてあの契約書がある。
 あれは単なる二人の間の約束事に過ぎないということなのだ。

「早めにあの婚姻届、出しに行くか」
「そうね。そうしましょう」

 そうして、会場の中に戻ろうとした槙野を美冬の手が引っ張る。

「何だ? キスか?」
「違うわよ。祐輔の方の事情は何だったのかなって……」

「あー……」
 ガーデンからは室内のパーティの様子が見える。綾奈が国東に腕を絡めているのも見えた。

「アレだな」
「綾奈さん?」

「あやうく結婚させられるところだったわけだな」
「あら。可愛くてセンスのある方だけれど」

「俺の好みではないんだ。申し訳ないが」
「そうよ! 私だって好みじゃないとか言われたのよね。どういう人が好みなのよ?」

 槙野はため息をつく。
 キスさせてくれないだろうか。

 美冬はとっても頑固な顔をして槙野を見上げていた。
 答えなくてはキスなんてさせてくれそうにない。
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