契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 こくりと綾奈は頷いた。
「お恥ずかしい話なんですけど、今までは役員と言っても名目だけで。けど、椿さんを見ていて、私も頑張りたいって思ったんです。現場で皆と動いていたら、気づいたら……あと、あの……素敵だと思う方が……」

「お仕事と恋かぁ……充実しているから綺麗になったんですね」
「はい……」
 そう言った綾奈の視線の先には石丸がいる。

 ──あら?
 これまた困難な相手だ。

 石丸は本当に綺麗だ。そして、とても優しい。
 美冬に対しても優しいけれど、それは美冬だからということではないのだ。
 誰に対しても等しく優しいのである。

『誰かと付き合ったりしないの?』

 アプローチは引きも切らない石丸なのだから、美冬もそう聞いたことはある。
 それでも、あの優美な顔でにこりと笑って、いい人がいたらね、とか言ってはぐらかされてしまっていたのだ。

 あまりにもそういう気配がないものだから、ものすごくストレートに『ゲイなの?』と聞いたこともある。

 さすがにその時は美冬が謝りたくなるレベルの冷たい視線を飛ばされた。顔立ちが整っているだけに冷たい顔をされると凍りつきそうなくらい怖い。
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