契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 その日の帰りは槙野も仕事で遅くなったらしく、車で帰るのでミルヴェイユまで美冬を迎えに来てくれたのだ。

 一緒にいると分かるのだが、槙野は意外と本当にマメなのである。

 ビルの正面に停められている槙野の車は彼に似合いのシルバーのスポーツカーだ。
 盾のようなエンブレムが車のボンネット部分に見える。

 美冬が外に出ると車の中から槙野が軽く手を上げる。
 美冬は助手席に乗り込んだ。

「ベンツとか乗ってるのかと思っていたのよね」

 冷静に考えたら槙野の見た目で黒塗りのベンツにでも乗っていようものなら、確実にヤのつく人になってしまう。

 くすくす笑いながら助手席で美冬が言うのに、槙野がハンドルを操作しながらちらっと美冬を見る。

「これの前はメルセデスだったな。黒ではなかったが」
「あら、本当に……」

「これはポルシェのアニバーサリーモデルで世界でも一千台そこそこしかない限定車だ」
 世界で一千台……ものすごく車が好きなのではないのだろうか。
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