契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「国東さんはダメだったみたい」
「あいつはちょっと軽いところがあるからな」
 そんな風に言って槙野は苦笑している。

「けど、今はうちのデザイナーの諒が気になっているみたいね。でも諒は難しいわ」
「ふうん? あいつは美冬のことが好きだからな」

「は?」
 急にそんなことを言われて美冬は言葉をなくした。

「気づいてなかったのか? 本人も気づいていたかは分からないが気はあったと思うぞ」

 そんな風に考えたことはなかった。
 出会ったのは会社に入ってからで、石丸諒は美冬が入社した頃にちょうど頭角を現してきた時期で、入社したばかりの美冬とは一緒に成長してきたような仲になる。

 美冬が社長になってから接点が増えたけれど、二人きりになってもなにもそんなようなことはなかった。

「だって、仕事が好きって言ってたわ」
「仕事をしていれば美冬と関われる。本人も意識しているかは分からない。だからそんな言い方になったのかもな」

「諒はずっと側にいたからそうやって言われたりすることもあったけど、男女の気持ちになったことはないわよ。お互いに」
「そうか? なら俺の気のせいだろう」
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