契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 服の隙間から身体を辿る指と肩に触れる唇。唇はゆっくりと背中の方にまで動いてきて、そのぬるっとした舌の感触まで伝えてきた。

 それが分かるくらいに自分の肌が敏感になってしまっているのを美冬はつぶさに感じる。

「鏡で顔が見える……」
「っ……や」

 カッと顔が熱くなる。
 ちらっと鏡で見てしまった自分の顔に美冬はうろたえた。

 ──いつも、こんな顔してるの?
 頬を赤くして潤んだ目元で切なそうに求めるような。

「や……」
 美冬は鏡に映っている自分の顔から目を逸らすのに、槙野の顔が映っていてドキンとする。

 鏡から美冬を見つめる顔は、その美冬の表情を一瞬でも見逃すまいとするように射抜くように見られていたからだ。

「そんな……見ちゃ……やだ」
「自分の顔、見たか?」
 こくりと美冬は頷く。

「ん……すごい、恥ずかしい……」
「感じてる顔、可愛いからもっと見せろよ」

 鏡越しの真っ直ぐな瞳にドキドキさせられる。
 この人に食べられてしまいたい、と思うのはこんな時だ。
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