契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 現金なもので、それを聞いた美冬はベッドから出ることにした。

 シャワーを浴びて支度を終えた美冬がダイニングに向かうと、もう準備万端の槙野がコーヒーを淹れてくれていた。焼きたてのパンはいい香りだ。

 槙野は先ほどまでのラフな感じと違い、シャツとトラウザーズという姿で、髪もピシッと決まっていた。

「これがあるってことは祐輔?」
 買いに行ってくれたのだろう。

「美冬の寝顔が可愛いし、ぎゅっと抱きついてくるのもたまらないし、あのままだと抱いてしまいそうだったんで、ジョギングしてきた」
 そんな風に言って、笑顔の槙野は美冬にコーヒーを渡す。

「え?」
(ジョギング? ……とは?)

 それはなんとなく体力はあるんだろうなとは思っていたけれど、美冬には信じられない。

 散々昨日したのではないのだろうか?
 それだけでは足りなくて、また朝抱こうとしていたということなのか。
 なるほど、もう一度ベッドに引き摺り込みたいと言うわけである。

「え? じゃあ、さっきのシャワーって……」
「走ってきてひと汗かいたからな」
 昨日の汗を流したいとかそういうことではなかったらしい。
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