契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「すごい体力ね」
「お褒めに預かり光栄だ」
「いや……褒めてるっていうか、なんていうか……」

「結婚式とかしたら、新婚旅行とか行きてーよな」
 タブレットで新聞をチェックしながら、パンを口にくわえて、槙野はそんなことを言う。

 確かに行きたい気持ちはあるけれど、それって大丈夫なのだろうか?
 一抹の不安を覚えた美冬である。

 ──その、抱き潰されたり……とかは?せっかくの旅行に行って美冬は起き上がれない、とかそういうことは??
 十分にあり得そうで美冬は乾いたような笑みを返すことしかできなかった。

「美冬、そろそろ出るぞ」
「うん。分かった」
 ごちそうさま、と手を合わせた美冬は使った皿を食洗機に入れてスイッチを押す。

 ウォークインクローゼットに入るとベストを羽織った槙野が支度をしていた。
 美冬はクローゼットを覗き、ネクタイを一本手に取る。

(チャコールグレーにホワイトのストライプシャツだから……)
 槙野が朝着ているシャツやスーツの色や形に合わせてネクタイを選んで結ぶのが最近の美冬の日課なのである。

「祐輔」
「ん」
< 274 / 325 >

この作品をシェア

pagetop