契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 美冬に呼ばれた槙野が美冬の前に立つ。丁寧に襟を立てた美冬がキュッとネクタイを結んだ。

「さすがだな」
 毎日やっているのに、毎日褒めてくれるのだ。

 ベストのボタンを止め、ジャケットを羽織ると槙野は先程まで美冬に甘かった婚約者ではなくて、いかにもやり手のビジネスマンになる。
 鏡越しに美冬はそっとそんな槙野を盗み見た。

 ──こういうのギャップ萌えっていうの?ズルくないかな。


 この日は美冬が出社すると石丸がウエディングドレスのデザインの希望を聞きに来た。
 槙野は正式に石丸にデザインを発注したらしい。

「槙野さんからは金に糸目はつけないから、美冬の好きなようにって言われたよ。あの人美冬のこと溺愛だよね」

免許皆伝、でしょーか??
 デザインの打ち合わせのためのリーガルパットを手にして石丸は何やらメモをとっていた。その打ち合わせ用のメモを参照しながらデザインをしてゆくらしい。

 ──溺愛……。
 それは否定しきれない。

「諒……あの、男の人ってあんなに、その……するものなの?」
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