契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 綾奈の風貌があまりにも変わってしまっているので、槙野は誰だか分からなかったようだ。

 綾奈に向かって誰何する槙野を美冬は綾奈と分かったらどういう反応なんだろうとつい、興味津々で見守ってしまった。

「私……木崎です」
「え?」
「木崎綾奈です」

 なるほど、鳩が豆鉄砲を食らうとこういう顔になるんだな、と納得した美冬なのだった。

 槙野は美冬を軽く睨んで、咳払いする。
 そんな場合じゃないだろう、という表情が見て取れた。ごめんね、と美冬も笑顔を返す。

「服がラインに乗るまでも全く発覚はしなかったんだな」
 そうして槙野は一瞬動揺はしたのものの落ち着きを取り戻して、確認を再開した。

「ご存じかと思うんですけど、うちはデザインからラインに乗るまでの行程がとても短いんです。店頭からは該当の商品は撤去しています」
 槙野は頷く。そうして美冬に向き直った。

「弊社としてもリードが行き届いていなかった可能性がある。その点についてはミルヴェイユにお詫びする。盗作については本人も認めているのだから事実なんだろう。弁護士を入れ、法的処置を取ることも可能だ」
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