契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
『弁護士』『法的処置』美冬はその槙野の発言にどきんしたけれど、ふと気づいた。

 意味がなければそんな発言をする人ではない。よく考えるのよ……。

 槙野は『弁護士を入れ、法的処置を取ることも可能』と言ったのだ。

「槙野さん、法的処置ってなんですか? 訴訟ということ?」

 美冬にしか分からない程度に槙野が口元を引き上げたのが見えた。おそらく美冬の質問は正しかったのだろう。

「訴訟だけとは限らない。そもそも契約があるわけだが、今回発生したことは想定外の出来事だった。しかし契約の解除に該当する事案ではある。弁護士を通じて契約解除を申し立てることができる。もちろん和解することもできるが、その際には弁護士に法に基づいて文書を作成させた方が間違いがない。そんなところだ」

 美冬は石丸を見た。石丸は腕を組んで少し不貞腐れたような顔をしている。

 穏やかな性格の人なのでこういう騒ぎは好まないはずだ。それでも被害に遭ったのは石丸である。彼の意志を尊重したかった。

「諒、どう?」
「大袈裟!」
 吐き捨てるように石丸は言った。
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