契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 ──夫婦……。
 槙野にそう言われてそんな場合ではないのに、ついそんな言葉を心の中で噛み締めてしまった美冬だ。

「やっだー! 夫婦とかー!」
 そんな言葉に思わず照れてしまって美冬は目の前の槙野の肩をバシッと叩く。

「痛いんだが……」
「分かったわ。契約結婚、ね」
「気のせいか、お前はしゃいでないか?」

 槙野から呆れ気味の声が聞こえた。けれど、美冬はそんなことは気にしない。

「えー、はしゃぎますよー。したかったもん結婚。おじいちゃんは安心してミルヴェイユを任せてくれると思うし、契約ってあらかじめいろいろ決められたら、あとで聞いてなかったー! とかないのでしょ?」

 美冬の明るさに反して槙野の首が折れてゆく。
「お前……恋愛とかしたいとか思わねーのかよ……」
 俯いた槙野からそんな低い声が漏れてきた。

「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「好きな奴とか付き合ってるやつは、いないのか?」

「それ、最初に確認して欲しかったけど、先ほどもお伝えした通りでおじいちゃんが心配するレベルでいないんですよね」
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