契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 二人が交わした契約書にも
『家計負担の合意
結婚生活における合意
お互いの親族との付き合いの合意』
などの記載はあるけれど、実は家事負担については記載がなかったのだ。

 それは槙野が家事もできることが前提にあったからかも知れなかった。

 もし仮に美冬が全く家事ができなかったとしても槙野の財力ならばハウスキーパーを雇えばいい、と解決してしまうことだったのだから。

 実際に今もお互いの負担を軽くするため、と週に一度は来てもらっている。

 槙野はそんなことで解決できるようなことは金を出して終わりにすればいいと考えているのだ。

 それよりも、実は気が合わなかったとか、金銭で解決できないものの方が根深くなることを知っているから。

 美冬とのことは価値観が近いことが何よりも幸せで大事なことなのだ。こんな風に気が合う人と巡り会えたことが何よりも幸せなことだと槙野は思っていた。

 そして何より美冬が愛おしいのは、槙野を頼ってくれることだ。

 強くて優しいくせに、槙野にだけは弱った姿も見せてくれる。
 そうして『怖かったの』と背中に手を回してくれるのだ。
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