契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「嘘でしょ……」
 へたり込みそうになる美冬だ。

「おい、へばってる場合じゃないぞ。ほら!行くぞ。アイツのデザイン、みんなに見せるんだろうが。いい宣伝だ。でなきゃ俺まで出るか」
 さっさと美冬の手を槙野が掴む。

「聞いてないよっ! 祐輔知ってたの?」
「知っていなければサイズぴったりのタキシードなんて出てこない。このタキシードも正確にはミルヴェイユ製だ。美冬の会社のデザイン部のメンバーが作ったからな」

「なんで教えてくれないの?」
「教えたらサプライズにならないだろう」
 槙野も会社のメンバーもみんなとても楽しそうだ。

「社長! 頑張って!」
「可愛い! 似合ってます。お似合いです、お二人とも」

 舞台袖に行くと急に緊張で表情も固くなる美冬だ。

 それを見た槙野は「行くぞ」と声をかけ、ランウェイの正面に美冬を引っ張っていくと、そのど真ん中でぎゅっと美冬を抱きしめて、舌も絡ませるほどのキスをしたのだ。

 会場からきゃーっと声が上がる。
 真っ赤になった美冬は槙野の胸を叩いた。

 イタズラっぽく笑うのはもう腹が立つくらいに男前で、キュートで……カッコ良すぎなんだけど!
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