契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「私には今好きな人はいなくて婚活もする気もありません。それに提携だって必ずしもうまくいくとは限らない。槙野さんは? 婚活されてるお時間あるんですか? 女性を口説き落としたりデートする時間が?」

「俺もそんな時間は確かにないな」
「じゃあ、やっぱりウィンウィンなのでは?」
 それに、この大型犬を飼いならすのは悪くない。

 槙野はそそけだったような顔で美冬を見た。
「お前! 今すっげー悪い顔してるぞ」
「えー? 気のせいだと思う」

 悪魔か……という小声が聞こえる。
 失礼な。

 槙野はため息をついて、美冬の手を離し、髪をかきあげた。

「俺を相手にそこまでできるなら上等だ。契約書を確認してくれ」
そう言って美冬の方に再度、契約書をすうっと滑らせたのだった。

「分かったわ」
 美冬はその契約書を手に取った。

『婚姻生活に関する事柄についての契約』
 それをそっと開き目を通していく。
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