契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 無理に奪っているはずなのに、求めているかのように美冬が身体を預けてくるから。

 美冬が頑張っているのは分かっている。そんなのは槙野が書類を確認したら分かることだ。

 自分の庇護下に置くのなら、そんなことで苦労はさせない。

 重い荷物は自分にも渡してもらう。
それが夫婦なのだから。
例え契約婚であっても、だ。

 美冬だけがしんどい、つらい思いをさせるようなことは槙野はしたくない。

「だったら、お前が持っているその重荷は……俺にも渡してもらうからな!」
 そう伝えずにはいられなかった。

 まさかぼうっとしていた美冬が意味をほとんど理解していないとは思わなかったが。

 ◇◇◇

「悪いな美冬! ミーティングが長引いた」
 祖父に挨拶に行く日のことである。

 そう言って病院のロビーにいた美冬に足早に寄ってきた槙野はものすごく目立っていた。

 美冬は最初は怖いと思ったけれど、こうして見るとキリリとした槙野の目元は印象深くて悪くないかもしれない。
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