契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 意識を取り戻した時、美冬はブラウスとスーツのパンツのまま布団にくるまっていた。

「ん……」
 身体を起こす。

──着替えなきゃ……。

 暗い部屋に目が慣れて、それが見覚えのない部屋でベッドも美冬のベッドじゃなくて、インテリアも見たことはないものだった時、一瞬何が起きたのか分からなかった。

 けど、部屋の設えからすると男性の部屋のようだし、酔ってしまった美冬を槙野が部屋で寝かせてくれたのだろうと思う。

 ベッドルームを出ると、突き当たりの部屋から電気の光が漏れている。
パタパタとキーボードを打つ音も聞こえているから、そこに槙野がいるのだろうと美冬は突き当たりの部屋のドアを開けた。

「槙野さん……」
「お、目ぇ覚めたか? 大丈夫か? 頭とか痛くないか?」

美冬がドアを開けた部屋はリビングダイニングだったようで、ダイニングの奥にはパソコンデスクやモニター、パソコンチェアが置いてあり、槙野はそこで作業していたようだった。

「はい……。ありがとう。運んでくれたのね。重くなかった?」
「いやー、腕がちぎれるかと」
「……!?」

 作業していた様子の槙野は椅子ごとくるりと振り返り、にやにやしながら美冬を見ている。
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