契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 その槙野のところに美冬は早足でかけよっていき、真っ赤な顔で肩をぺんっと叩く。 

「ひどいよー。重いかもだけど腕がちぎれるとか。そんなに?」

 だったら起こしてくれたらいいのにっ!
 恥ずかし過ぎるよ!

「ははっ、うそうそ。全然軽かったよ」
 そう言って笑った槙野が立ってキッチンに向かうので、美冬もその後をついて行く。

「水飲むだろう?」
「うん」
 美冬は酔うと寝てしまうのだが、その後はあまりお酒が残ることはなく、起きればスッキリしているのが通常だ。

 ほら、と冷蔵庫からペットボトルの水を渡されて、美冬はダイニングのカウンター越しに受け取る。ペットボトルのキャップを捻って水を飲んだ。

「今、何時だろ……」
 落ち着いたら、美冬は急に時間が気になってきたのだ。

 槙野は自分の腕時計を確認している。まだスーツのジャケットを脱いだだけで部屋着に着替えてもいなかった。

「1時過ぎだな。もう泊まっていくだろう?」
「え? あ……」

 どちらにしても、近日中に槙野の家には来いと言われていたし、以前にも見ておいたらとは言われていたのだ。

 不可抗力ではあるけれど、それが今日でいけないということはない。
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