契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 とても爽やかないい香りのものだ。おそらくは香水とセットで使っているのだろう。
 ほんっとうにズルい。
 槙野が怖いなんて、最初の印象だけだ。

 そばにいればいるほど、その優しさとか頭をポンとする時の甘い顔とか飾らないところとか、どんどん魅力的なところばかりを見せられる。

 美冬はきゅっとコックを捻ってシャワーを頭から浴びた。

 槙野にはどんどん魅力的なところを見せられるのに、自分は槙野に情けないところしか見せられていないのが切ない。

 酔っ払ってベッドに放り込まれるとか……。
 しかも、腕がちぎれるとか言われたわ。

──契約……だもんなぁ。槙野さん、事情があると言っていたし。

 コンコン、とバスルームのドアをノックされて、外から「美冬」と呼ばれて、美冬はどきっとして、慌ててシャワーを止めた。

「はいっ」
「着替え、ここ置いとくから。しっかり温まって出てこいよ」
「はーい。ありがとうございます」

◇◇◇

 リビングに戻った槙野はソファに身体を投げ出す。
 酔っ払った美冬はとんでもなく可愛かった。

 少し舌っ足らずな喋り方と甘えるような仕草と。隣に座ってそのくるくると変わる表情を見ていた。
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