天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 家族連れやカップル。スーツを着たサラリーマン。旅行ツアーらしき団体客もいる。

 私はその姿を少し離れたところからぼんやりと眺めるのが好きだ。

 行きかう靴音や話し声、出発を知らせるアナウンス。
 ここではないどこかへ旅立つ人。
 それを見送り別れを惜しむ人。
 自分を待つ人の元へ帰る人。

 みんなそれぞれに目的地があり、そこへ向かうために飛行機に乗る。

 その様子を眺めているのが好きなのだ。

 しばらくそこに座っていると、ぎしりと音がして微かにベンチが揺れた。

 なんだろうと不思議に思って顔を上げる。背後に立つ人が背もたれに手を置き、私のことを見下ろしていた。

「か……っ!」

 驚きのあまり言葉が出ず、ぱくぱくと口を動かす。

「里帆。搭乗訓練お疲れ様」

 そう言ってこちらを見つめるのは、私服に着替えた翔さんだった。

 どうしてここに。広いターミナルビルで、偶然出会うことなんてないと思っていたのに……。

 私は慌ててベンチから立ち上がり、翔さんと距離を取る。

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