天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 管制塔に顔を出し、主幹に搭乗訓練を終えたと報告してから帰る支度をする。

「蒼井さん、どこかでごはん食べて帰りません?」

 富永さんが誘ってくれたけれど、「ごめん。今日は疲れたから」と断った。

 脳裏には操縦桿を握る翔さんの姿が焼き付いていて、まだ頭がぼうっとしていた。

 とてもおしゃべりしながら楽しく食事する気分じゃなかった。


 いつも通勤に利用している電車の乗り口ではなく、ターミナルビルへと向かう。
 出発ロビーにやってくると、ひとりでベンチに座った。

 そしてぼんやりと辺りを眺める。

 心が落ち着かないときは、出発フロアでこれから飛行機に乗り込む人たちを眺めるのが私の習慣だった。


 空港内は賑わっていた。

 私の目の前をいろいろなキャリーケースが通り過ぎる。
 シンプルなシルバーや明るいピンク。ステッカーが貼られていたり、あちこち傷がついていたり、買ったばかりの新品のものも。

 それをひっぱる持ち主も様々だ。
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