天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 全部、私が同僚の元恋人だと知っていたから……?

 体から血の気が引いて、手足が冷たくなる。

 翔さんは日本に帰ってきてから私のことを尚久に話したりしたんだろうか。
『お前の元恋人がパリでさびしそうにしていたから相手をしてやった』なんて話をして、哀れな私を笑っていたんだろうか。

 顔色を変えた私を見て、翔さんが首をかしげる。

「里帆、どうした?」
「あの……。もしかして、翔さんは私の元カレのことを知っていたんですか?」

 疑いながらたずねると、翔さんは不思議そうな顔をした。

「いや、パイロットということしか聞いていないが」

 その言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろす。
 どうやら翔さんは私が尚久の恋人だということを知らないようだ。

 それもそうだ。
 OJAは日本で一番大きな航空会社で、数えきれないほどのパイロットがいる。

 翔さんのようなエリートが、新米パイロットの尚久の恋愛事情まで把握しているはずがない。

< 102 / 238 >

この作品をシェア

pagetop