天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「浮気を知った時点で、もう彼を好きだとは思えなくなってしまったんです」

 里帆は頑なな口調で言う。

 真面目な彼女にとっては、長年付き合ってきた恋人の浮気は本当にショックだったんだろう。

 けれど疑問が湧いてきた。

 お人好しで優しい彼女が、浮気を知った時点ですべてを拒否してしまうなんて。

「里帆はどうして彼の浮気を知ったんだ?」

 俺が質問すると、里帆の表情が硬くなった。
 しばらく黙り込んだ後、小さな声で「電話が」とつぶやく。

「電話?」
「夜、ひとりで部屋にいるときに、フライトで宮崎に行っている彼から電話がかかってきたんです」

 それだけ言って、ゆっくりと息を吐きだす。
 細い指先がわずかに震えていた。

「通話ボタンを押してスマホを耳に当てたら、聞こえてきたのは女の人の甘い声と衣擦れの音でした」

 里帆の言葉に「まさか」と低い声が漏れた。
 自分でも信じられないくらいの怒りが湧いてくる。

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