天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「いえ。旅行の一週間前に別れました」
「どうして」
「……浮気されたんです」
言葉にすると、胸の辺りが苦しくなった。
「大学時代からずっと付き合っていて、夢を叶えるために頑張る彼を応援していたのに。彼は自分の夢を叶えた途端、職場の若い女の子と浮気をしたんです」
話しているうちに別れたときの気持ちがよみがえってきた。
彼との六年間はなんだったんだろうとむなしくなる。
「夢?」と不思議そうに問われ、説明する。
元カレの志田尚久は私と同じ二十七歳で、旅客機のパイロットになるという夢を持っていた。
男性にしては少し色が白く、物静かでやわらかな笑顔を浮かべる彼のことを思い出し、胸がずきんと痛んだ。
尚久は大手航空会社の自社養成パイロット訓練生になり、地上勤務や様々な訓練の期間を経て、今年の春に副操縦士になった。
そのお祝いにと計画したのが今回のフランス旅行だった。