天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 その横顔を見ながら、こうやってふたりで話すことはもうないんだろうなとぼんやりと思った。

「そういえば、矢崎機長とはどうして付き合わないんだ?」

 お返しとばかりにそう聞かれ、言葉に詰まる。

「どうしてって……」
「矢崎機長は男の俺から見ても誠実でかっこいい人なのに、里帆が拒む理由がわからない」
「もう、パイロットとは付き合いたくないから」

 私が言うと、尚久は申し訳なさそうにため息をつく。

「俺のせいか」
「尚久だけのせいじゃない。私の気持ちの問題」
「里帆は矢崎機長のことが好きなんだろ?」

 その質問に、少しためらってから素直にうなずいた。

 彼の顔を思い浮かべるだけで胸が苦しくなるほど、好きで好きで仕方ない。

「だったら、素直になったほうがいい」
「でも……」
「里帆も管制官だからわかるだろ? パイロットはフライト中にいつ不測の事態が起こってもおかしくないって。予想外の悪天候や機材トラブル、国際線なら現地の紛争に巻き込まれることもある」
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