天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
『左エンジンは電気系統のトラブルの疑いがあり、そうであれば右エンジンにも問題が発生する可能性があります』

 両方のエンジンが停止すれば、飛行機は推進力を失い墜落する。

 目の前が真っ白になりかけたけれど、自分でも驚くほど力強い声で応答していた。

「OJA212便を最優先で着陸させます」

 消防車や救急車に出動を要請し、万が一の事態に対応できるよう救急隊員に待機してもらう。

 そして、上空で着陸を待つほかの旅客機には、OJA212便の航路を遮らない高度で旋回して待つよう指示を出す。

「蒼井、管制変わるか?」

 北原くんに心配そうにたずねられ、私は迷わず首を横に振った。

「ありがとう。でも、大丈夫」

 そんなやりとりをしている間にも、天候はどんどん荒れていった。
 管制塔の窓には激しい風とともに大粒の雨が叩きつけられる。

 そんな最悪の状況の中でも、翔さんが操縦する機体を絶対に無事に着陸させるという強い気持ちで前を向く。

『管制タワー。こちらOJA212便』

< 175 / 238 >

この作品をシェア

pagetop