天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「いえ、大丈夫です。こちらこそ気を遣わせてすみません」
首を横に振った私に、彼がたずねる。
「でも、どうしてそんなことがあったのに旅行をキャンセルしなかったんだ?」
「長期休暇の間、ひとりで家にいても落ち込むばかりだろうし、思い切って旅行でもすれば気分が変わるかなと思ったんですけど……。結局逆効果でした」
こんな遠い国まで来たというのに、ひとりでいると尚久のことばかり考えてしまう。
せっかくだから観光しようとガイドブックを開いても、彼と旅行の計画を立てていたときのことを思い出してしまう。
とても旅行を楽しめるような気分じゃなかった。
「五日間の日程だったんですが、ホテルの部屋や公園でぼんやりしているだけでした。その上、あなたにもご迷惑をかけてしまったし……。やっぱり旅行なんて来るんじゃなかった」
落ち込みながらつぶやく私を見て、彼が「翔」と短く言った。
「え?」