天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「お礼の言葉よりも、里帆が笑ってくれるほうが嬉しい。今日は俺との時間を楽しむ約束だろ」
おずおずとうなずくと、翔さんが微笑んでくれた。
その表情が優しくて、胸の辺りがくすぐったくなる。
「行こうか」と翔さんが私の手を引いた。
さりげない気遣いが嬉しかった。
歩きながら視線を足もとに向ける。
街路樹のマロニエの葉の間からこぼれる木漏れ日が、石畳の上で揺れていた。
色がまばらでところどころ欠けた石畳を見て、ここは日本じゃないんだと唐突に思った。
顔を上げると、パリの街並みが広がっていた。
綺麗だと素直に感じ、新鮮な驚きが胸に迫る。
フランスについてから四日間。
いつもひとりでぼんやり外を眺めていた。
セーヌ川やエッフェル塔を見ても、景色が灰色に塗りつぶされてしまったかのように、なんの印象にも残っていなかった。