天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~


 そう言われ、驚いて手を止めた。

「え、夜まで一緒にいてくれるんですか?」

 なんの予定もないひとり旅の私とは違って、お仕事でフランスに来ている翔さんは忙しいんじゃ……。

 私のために時間を割いてもらうのは申し訳ないし、迷惑になるかもしれない。

 戸惑う私を翔さんがいたずらっぽい表情で睨んだ。

「今日はめいっぱいパリを楽しむって約束だろ」

 その言葉に目を瞬かせる。

 そうだ。私と翔さんは賭けをしたんだっけ。

 なんで彼があんな条件を出したのか不思議だったけれど、もしかしたら私に遠慮させないための、気遣いだったのかもしれない。

 翔さんの優しさに気づいて、少し泣きそうになってしまった。

「そうでした。私は翔さんの言うことを聞かないといけないんですよね」

 私は目元を拭ってから、そう言って笑った。



< 36 / 238 >

この作品をシェア

pagetop