天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
私は慌てて首を横に振り、胸のもやもやを振り払う。
「里帆?」
名前を呼ばれ顔を上げると、翔さんが首をかしげていた。
「なんでもないです」と取り繕う。
長い腕が伸びてきて、自然に私の腰を抱く。
道行く人の視線が、彼に集まるのがわかった。
美しいパリの街で、こんな素敵な男の人にエスコートされているなんて、まるで夢を見ているみたいだった。
「わぁ、すごい……」
タクシーを降りた私は目の前にある美しい建物を見上げる。
豪邸が立ち並ぶ高級住宅街の中で、ひと際大きく高級感の漂う外観。
厳粛な雰囲気の黒い鉄の門扉と、その奥にある瀟洒な白い石造りの豪邸。
まるで貴族が住むお城みたいだ。
立襟の制服を着たドアマンがうやうやしくドアを開いてくれた。
その非日常感に、浮足立ちそうになる。
歴史と気品を感じて息をのんでいると、「行こう」と翔さんが私の背中に手を添え促す。
「あの、ここは」