天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
『UAS158便。周波数120.8.に接続してディパーチャーと交信してください。よいフライトを』
『USA158便。了解。ディパーチャーと交信します』

 最後に片言の日本語で『イッテキマース!』と付け加えてくれた。
 
 海外のパイロットはこういうふうに挨拶をしてくれる人が多い。

「行ってらっしゃい。気を付けて」

 機体を見送りながら、小さく微笑む。
 ささやかなやりとりに心が和む。

 とはいえ、ほっこりしている場合じゃない。

 ここは日本で一番利用者の多い巨大国際空港で、航空機の離発着数は年間四十万を超える。
 平均すると一日で千機もの航空機がこの空港を利用するのだ。

 その数は国内二位の空港と比較しても桁違いに多い。

 ひっきりなしに離発着する航空機を、安全かつスムーズに誘導するのが、私たち管制官の仕事だ。

 気を引き締めて仕事を続ける。

「蒼井、変わる。お疲れさん」

 十五時を過ぎたころ、パーカーにジーンズ姿の同僚の北原くんに声をかけられた。

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