天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 管制官は公務員だけど人に接する仕事ではないので、服装はわりと自由だ。
 私もシャツワンピースにカーディガンというカジュアルな格好で仕事をしている。

「ありがとう」

 うなずいてヘッドセットのプラグを抜き北原くんに場所を譲る。

 この空港は二十四時間動いている。
 私たち管制官も交代制で仕事をするのだ。

 ずっとつけていたヘッドセットを耳から外し伸びをすると、関節がパキパキと音をたてた。

「すごい音だな」

 そう言って笑うのは、上司である武地主幹だ。
 五十代の武地主幹は丸顔でぽっちゃりしていて、ゆるキャラのような愛嬌がある。

 私は首を軽くストレッチしながら顔をしかめる。

「朝七時からずっと座りっぱなしで離発着の指示を与えているんですから、肩も凝りますよ」

 席をかわったばかりの北原くんが苦笑しながらうなずいた。

「まぁ、疲れるよな。完全な裏方で誰にも感謝されないのに、絶対にミスは許されない仕事だし」

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