天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 その言葉に、同じく朝からの勤務だった後輩の富永さんも首を縦に振って同意する。

「本当ですよ。みんな飛行機に乗って楽しくお出掛けしてるのに、私たちは塔の上に閉じ込められてひたすら見送るだけなんて、地味すぎる」

 富永さんは明るめのセミロングの髪を指でいじりながら唇をとがらせる。

 そんな仕草が様になるほどかわいらしい彼女は、私の二歳年下の二十五歳だ。
 この管制室の中で一番若い。

 私たちの仕事は、安全な空の旅を守る大切な仕事だ。

 とはいえ、大空に飛び立つ飛行機を毎日数えきれないくらい見送っていると、うらやましくなる富永さんの気持ちもわかる。

「そういえば、蒼井は休暇をとってフランスに行ってたんだよな。楽しかったか?」

 武地主幹が私にたずねた途端、富永さんが顔色を変えた。

「武地主幹、それ禁句!」

 口止めするように叫んだ彼女に、私のほうが驚く。

 禁句って、いったいなにが?

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