天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「あぁ、すまん。そうだった! 蒼井は旅行直前に彼氏に浮気されて、ひとりさみしく傷心旅行してたんだもんな。楽しいわけないよな」

 その言葉に目を見開く。

「待ってください。なんでそんなこと知ってるんですか?」

 言いながら、嫌な予感がして振り返る。

 その場にいた同僚たちが、一斉に私から目をそらした。

 なにその反応……。と眉をよせる。
 まさかみんな、私が恋人に浮気されたことを知っている?
 なぜ私の個人的な事情が職場に駄々洩れなんだろう。

 その原因は、ひとつしか考えられない。

 私がゆっくりと前を向き無言で富永さんを見つめると、彼女は「てへっ」と小首をかしげて笑った。

「蒼井さんが旅行でお休み中、話し相手がいなくてさみしくて、つい口がすべっちゃいました」
「口がすべったって……」

 悪びれない彼女に脱力してしまう。

「ごめんなさーい。怒ってます?」

 小柄な富永さんに顔をのぞき込まれ、ため息をついた。

 富永さんは明るくて話し上手ないい子だ。
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