スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
私は声の主に顔を向ける。
「……やっぱ、瑠璃川センパイだ」
長めの茶髪に複数のピアス、そしてなにより特徴的な鋭い目つき。
「もしかして……長谷川、くん?」
「そうっす。お久しぶりです」
そう言って無愛想に軽く頭を下げた。
長谷川達也。
彼は私が昔通っていたバレエスクールの後輩だった。
何度かペアを組んで踊り、バレエスクールの中でもよく話をしていた。
それでも長谷川くんは基本的に無口で無愛想なので、特別親しいかといえばそういうわけでもなかったのだが。
「日本、戻ってたんすね」
「うん、つい先日。そ、そういえば偶然だね。こんなところで会うなんて」
私は帰国した理由について聞かれる前に話を切り替える。
長谷川くんは自動販売機で買ったのか、缶コーヒーを片手に私のそばに腰掛けた。
「今日はたまたま休みで。オレ温泉とかいくの好きなんで一人で……」
「そうなんだ。ここ足湯以外にも普通の温泉も完備されてるもんね」
「そういうセンパイはひとりで足湯っすか?」
長谷川くんの質問に答えようと口を開きかけるが、その前に遮る声があった。
「──ひとりじゃないですよ。俺と一緒です」