恋に落ちる音  【短編】
 結局、ハル君に告白するチャンスも無いままカフェの店員とお客の関係が続いていた。
 クリスマス当日の街中は、ザワザワと浮足立ち、カップルや家族連ればかりが目についた。そんな中で、自分だけが一人ぼっちのように感じ寂しさが募る。

 いいなぁ。みんな楽しそう。

 せめて、ハル君を一目みようとカフェに向かう。
 「シフトに入っているかどうかもわからないのにバカみたい」心の中で呟く。

 街の雑踏の中、偶然に彼を見つけた。
 「ハル君だ」
 こんなにたくさんの人の中からどうして彼を見つけてしまうのだろう。
 もしかしたら、これは告白するチャンスなのかも
 クリスマスだし、神様がくれた偶然だとしたら?そう考えると胸が高鳴る。
 ドキドキとしながら、ハル君の様子を眺めて居いた。
 次第に人垣が切れ、隣に誰かいるのが見えた。それは、ハル君よりも少し年上っぽい髪の長い綺麗な女性。
 二人で楽しそうに話しをしながら、ショウウインドウを覗き込んでいる。
 女性の手が伸びハル君の髪に触れた。ハル君が照れくさそうに笑う。

 ふと、振り返ったハル君と目が逢った。
 すると、ハル君がこちらに気が付いたようで隣にいる女性に声をかけ、私に手を振る。

 だけれど 私は、いたたまれずにその場から(きびす)を返し立ち去る事しか出来なかった。


 ああ、そうだよね。
 ハル君、素敵だもん。彼女がいて当たり前だよね。バカみたい。
 なんで、そんな当たり前の事を今まで考え無かったのだろう。
 いつか自分と結ばれるなんて、都合のいい夢を見て本当にバカみたい。

 気が付くと、頰が涙で濡れていた。

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