恋に落ちる音  【短編】
 クリスマスの街は、家族連れやカップルで賑わい混み合っていた。人の間を駆け抜ける。背の高くない私は、直ぐに人混みに紛れるだろう。
 ハル君の視界から消えているはず、それでもスピードを緩めずに駅ビルを抜け、神社を目指した。
 クリスマスで幸せ色に染まった街中には、居たくなかった。
 外は、かなりの冷え込みでチラチラと雪が舞い始めている。
 天気予報は晴れだと言っていたのに、これではベンチにも座れない。
 馴染みのお団子屋さんも早仕舞いをしている。
 神社の参道に入ると白く雪が積もり始めていた。
 真っ白になった誰もいない境内に入ると雪の上に足跡が残る。
 駅から此処まで走って来て、息が上がり自分の呼吸だけが、ハァハァと聞こえた。周りの喧騒から切り離された神聖な空間に気持ちが落ち着いてきた。

 手水舎に寄り、切れるように冷たいお水で手を洗い口をすすぐ
 「つめたっ!」
 水の冷たさで指先が赤くなっていた。
 二礼二拍手一礼
 お賽銭を入れる。
 けれど、何をお願いしてい良いのか分からなくなってしまった。
 ”ハル君の事が好きで、ハル君と恋人同士になりたい”と願えば、ハル君と恋人が別れることが前提になる。でもそれは、ハル君の不幸。
 私は、ハル君には幸せになってもらいたい。できれば、自分が幸せを分かち合える人で在りたかった。ハル君の不幸の上に成り立つ自分の幸せは、違う気がする。
 少し考えてから
 「神様、お願いします。ハル君を幸せにしてください。そして、私にもいつか幸せをください」
 と、心から願った。


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