冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
救世主は椿さんだった。
驚いた顔の後、眉を寄せられる。見知らぬ男性に肩を抱かれて、親密そうにしていたこの状況で、普通の夫婦なら修羅場だろう。
しかし、私たちは違う。
ひとりで対処が難しい、ガタイの良い男性に絡まれていた窮地を救ってくれる存在が現れて、安心感が胸に広がった。
急いで椿さんに駆け寄り、背中に隠れる。
「藍。誰だ、あの男」
「向坂宇一って名前の元彼よ。今日の結婚式のゲストだったの。二度と会いたくないほど、とてもタチの悪い人」
素早く会話をして、状況を伝えた。すぐに理解したらしい椿さんは、営業モードのにこやかな表情になる。
「お客様。当ホテルの従業員と、なにかトラブルでしょうか」
「ああ、いえ。旧知の仲で声をかけただけです。お気になさらず」
ふたりは身長も同じくらいで、タッパのある宇一さんと対峙しても引けをとらない。
椿さんは紳士的な対応であるものの、一歩も引かない強さがあった。