冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


「あなたは藍の上司ですか? 駆け寄られて庇って、ずいぶんと頼りにされているみたいですけど」

「申し遅れました。ホテルスタッフの久我 椿と申します」

「久我? まさか、久我ホールディングスの? ホテルの経営者ですか?」

「いえ。私は当ホテルの総支配人ではありません。久我の家系ではありますが、ここでは一介のスタッフです」


 丁寧なやりとりに、宇一さんはこの場に現れた第三者が久我一族のひとりだと理解したようだ。

 あくまで穏便に済ませる予定の椿さんは、必要以上には身分を語らなかった。

 宇一さんは、彼を格上の相手だと判断しながらも、私たちの関係を知らないまま無遠慮な言動を続ける。


「とにかく、トラブルではありませんので、ふたりにしてもらえますか。今、彼女を口説いている最中なんです」

「ほぉ……」


 椿さんの声のトーンが一気に低くなった。

 よからぬ状況だと察してはいたが、ここまで踏み込んできていたとは思わなかったらしい。

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