冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
宇一さんが私に手を伸ばそうとした腕を、強く掴んで制止した。営業スマイルのままでいる椿さんは、本心が読めないからこそ恐ろしい。
一方の宇一さんも苛立ってきたようで、眉を寄せて脅しにかかる。
「放してください。上司は従業員のプライベートまで管理するんですか? はっきりお伝えしますが、あなたは今、とても邪魔です。早く立ち去ってくれませんかね」
威圧感のある言動は、震えるほど怖い。
しかし椿さんは、腕を掴む指にさらに力を入れた。
「立ち去るのはあなたの方です。今は上司ではなく、彼女の夫として言っています」
「はっ?」
宇一さんはそこで初めて、自分の腕を掴む彼の左手と、椿さんに隠れてスーツにしがみつく私の左手に、同じ指輪がはめられていると気づく。
その瞬間、過去に捨てた女が自分よりも遥かにステータスの高いホテル王の妻になった事実が気に障ったようだ。
激しい動揺を見せた後、ぱっと腕を振り払う。